健康食品やサプリメントの商品企画についてご相談を受けると、かなり早い段階で『今は何の成分が売れていますか?』『○○という原料を使えば売れますか?』と聞かれることがあります。
気になるのは当然です。ただ、私は24年以上この業界で、数千件以上のご相談や商品開発支援に携わってきましたが、売れている成分を探すところから商品企画を始めることは、あまりおすすめしていません。
なぜなら、健康食品は『何を入れるか』だけで売れる商品ではないからです。誰が、誰に、どこで、どのように売るのか。その条件によって、同じ成分でも商品設計はまったく変わります。
商品を作ってから売り方を考えるのではなく、売り方から逆算して商品を作る。私はこの順番をかなり大切にしています。
先に結論です。
健康食品の商品企画で最初に調べるべきなのは、流行している原料ではありません。『最初の1,000個を、誰に、どこで、いくらで、どう売るのか』です。ここが見えれば、原料・剤型・価格・パッケージの判断はかなりしやすくなります。
1.原料より先に「誰がどこで売るか」を決める
健康食品の企画相談で、私はまず販売方法を確認します。
たとえば、同じ美容系のサプリメントでも、EC広告で全国に販売する商品と、エステサロンでスタッフがお客様に説明しながら販売する商品では、求められる設計が違います。
ECなら、広告を見た数秒で商品の特徴が伝わることや、競合商品との違いを明確にすることが重要です。一方、サロンやクリニックなどの対面販売では、販売する人が説明しやすいこと、既存サービスとの相性、継続して提案しやすい価格帯などが重要になります。
会員制通販であれば、初回のインパクトだけでなく継続率も重要です。小規模店舗なら、棚に並べたときに説明なしでもある程度意味が伝わる必要があります。
つまり、販路が違えば、売れる商品の条件も変わるということです。
当社の商品企画に対する考え方は、売れる健康食品をつくる企画力でも詳しく紹介しています。
2.まず「最初の1,000個をどう売るか」を考える
私は、新しく健康食品を作る方に対して、よく『最初の1,000個を誰に売りますか?』という視点で考えます。
健康食品OEMでは、オリジナル処方で商品を作る場合、1,000個前後が現実的なスタートラインになることが多いからです。
ここで大切なのは、1,000個という数字そのものではありません。誰が買うのかが具体的に見えているかです。
『SNSで売ります』『ネットで広告を出します』『健康に興味がある人に売ります』では、私はまだ販売計画が見えているとは考えません。
たとえば、既存顧客が500人いるサロンで、毎月100人に提案できるのか。クリニックで月に何人へ説明できるのか。会員が何人いて、そのうち何%が購入すれば1,000個を消化できるのか。そこまで見えると、商品企画が具体的になります。
小ロットとコストの考え方については、健康食品OEMで小ロットを考えている方へ──本音で語る製造ロットとコストの話も参考にしてください。
3.競合商品を見る。ただし「真似するため」ではない
競合調査は必要です。ただし、売れている商品を見つけて『これと同じような商品を少し安く作ろう』となると、私は危ないと思います。
すでに売れている商品には、長年の広告投資、知名度、販売網、既存顧客、ブランド力がある場合があります。商品だけ似せても、その背景まではコピーできません。
私が競合を見るときに気にするのは、成分の数よりも、誰に向けて、どんな言葉で、どの価格帯で、どの販路から売っているかです。
そして、競合と同じ場所で同じ戦い方をする必要があるのかを考えます。
大手が広告費を大量に投入している市場に、小さな会社が同じ方法で入れば不利になることがあります。逆に、既存顧客との信頼関係や対面販売など、大手が簡単には真似しにくい販路を持っている会社には強みがあります。
健康食品ビジネスの利益構造については、サプリメント販売は儲かるのか?中小事業者・新規参入が大手と競合せず利益を出す方法でも解説しています。
4.「売れている理由」より「なぜその人が買うのか」を見る
ランキングや市場データを見ること自体は悪くありません。ただ、数字だけを見ていると、本当に知りたいことを見失うことがあります。
たとえば、ある成分の商品が売れていたとしても、それが成分そのものの人気なのか、広告が強いのか、有名人を使っているのか、既存顧客が多いのか、価格が安いのかは分かりません。
ですから私は、『なぜこの商品を、この人が、この場所で買うのか』まで考えます。
健康食品は、成分表だけを比べて買う人ばかりではありません。『いつも通っている先生がすすめてくれた』『自分の悩みに合っていると感じた』『説明が分かりやすかった』『無理なく続けられる価格だった』という理由で選ばれることもあります。
こうした購入理由は、Amazonのランキングだけを見ても分かりません。既存のお客様がいる会社なら、私は机上の市場調査よりも、実際のお客様との会話の中に商品企画のヒントがあると考えています。
5.販売価格と原価は、処方を決める前に考える
『良いものを作って、あとから価格を決める』という順番もおすすめしません。
健康食品は、使いたい原料を増やしていけば原価も上がります。パッケージにこだわれば資材費も上がります。小ロットになれば1個あたりの負担も大きくなります。
ところが販売価格には、販路ごとの上限があります。
3,000円前後で売りたい商品なのに、完成してみたら原価が2,000円近くになっていた。こうなると、広告費や販売手数料を考えたときに利益が残らない可能性があります。
だから私は、売価 → 必要な利益 → 許容できる原価 → 処方という逆算も大切だと考えています。
OEM開発費の目安は健康食品OEMのリアルな開発コスト、販売価格の考え方は販売価格の決め方で詳しく説明しています。
6.「売りやすさ」は中身だけで決まらない
商品企画というと、どうしても成分や配合量の話になりがちです。しかし実際には、剤型、味、飲みやすさ、パッケージ、商品名、説明のしやすさまで含めて商品企画です。
私は、成分的には立派でも、毎日飲みにくい商品を高く評価しません。健康食品は一度飲んで終わりではなく、継続してもらうことが重要だからです。
たとえば粉末なら味や溶けやすさ、錠剤なら粒の大きさや1日の粒数、顆粒なら口当たりや個包装の使いやすさなども販売に影響します。
そして、販売員が30秒で説明できない商品は、対面販売では扱いにくくなります。
『成分が多い=売りやすい』ではありません。むしろ、誰向けの商品なのかが一言で伝わる方が販売しやすいことがあります。
7.市場調査は「当てる作業」ではなく、失敗を減らす作業
どれだけ市場調査をしても、発売前に100%売れると分かる商品はありません。
長年この仕事をしていますが、『これなら絶対に売れます』とは言いません。商品が売れるかどうかは、商品そのものだけでなく、販売力、価格、時期、競合、顧客との関係など多くの要因で決まるからです。
では市場調査は何のためにするのか。
私は、大きな失敗をする確率を下げるためだと考えています。
誰が買うのか分からない。どこで売るのか決まっていない。販売価格も決まっていない。競合との差も分からない。その状態で製造だけを進めるより、一つずつ不確定要素を減らしてから商品化した方が当然失敗しにくくなります。
売れない商品の典型例については、失敗する健康食品(サプリメント)ビジネスの例も併せてご覧ください。
私が企画相談で最初に確認したい7つのこと
難しい分析表を作る前に、私はまず次のことを整理します。
- 誰が販売するのか
- 誰に販売するのか
- どこで販売するのか
- なぜそのお客様が買うのか
- いくらなら無理なく販売できるのか
- 最初の1,000個をどう販売するのか
- 買った人が、なぜもう一度買うのか
この7つが整理されると、必要な成分、剤型、容量、パッケージ、製造ロットなどがかなり見えやすくなります。
逆に、この部分が曖昧なまま原料選びから始めると、途中で『誰向けの商品でしたっけ?』となりやすいのです。
クライアントの頭の中にある商品を、どう形にするか
ただし、私はクライアントから出てきた希望を、そのまま単なる『仕様』として受け取らないようにしています。たとえば『この成分を使いたい』というご希望も、単にその原料を入れたいという意味だけではなく、その方が思い描いている商品のコンセプトや世界観を表すメタファーになっていることが少なくありません。自然志向なのか、先進的な印象を出したいのか、高級感を持たせたいのか。会話の中から、その方の好みや考え方、誰にどんな商品を届けたいのかまで読み取っていく必要があると考えています。
商品より先に、売り方を作ってもらうこともあります
商品企画というと、まず配合を決めて、それから販売方法やLPを考えるものだと思われるかもしれません。ですが私は、場合によってはまったく逆の順番で進めることがあります。
実際に、販売時のセールストークのスクリプトや商品のLPを先に作ってもらい、『では、その内容に沿って私が配合を組みます』という進め方をしたこともあります。
先に『誰に、何を、どのように伝えて売りたいのか』が言葉になっていれば、販売担当者が頭の中で描いている商品の姿がとてもよく分かるからです。成分表だけを見ながら打ち合わせをするより、実際にお客様へどう説明したいのかを見せてもらった方が、私はその意図をずっと正確に汲み取れます。
もちろん、先に作っていただいたLPやセールストークが、そのまま使えるとは限りません。健康食品では、薬機法や景品表示法などの観点から、表現を修正しなければならないことも少なくありません。
それでも、この方法には大きな意味があります。法律上そのまま使えるかどうかとは別に、『この商品で何を伝えたいのか』がはっきり見えるからです。
私は、商品開発は単に処方を作る作業ではないと思っています。売る人が頭の中に描いている商品を読み取り、それを実際に売れる形・伝えやすい形へ翻訳していく作業でもあると考えています。
健康食品の商品企画は、聞いた要望をそのまま並べる仕事ではありません。まだ十分に言葉になっていないクライアントのイメージを汲み取り、実際の商品として成立する形に翻訳していくことも、私たちの大切な仕事だと考えています。
私が相談段階で「少し危ない」と感じる商品企画
長年ご相談を受けていると、商品化する前の段階で少し気になるパターンがあります。
- 人気商品とほぼ同じものを、少し安く作ろうとしている
- ターゲットが『健康に興味がある人』で止まっている
- 販売価格を最後に考えようとしている
- 販路が決まっていないのに製造数量だけを気にしている
- 商品を作れば、あとは広告で売れると考えている
- 特徴を増やそうとして、説明しにくい商品になっている
もちろん、これらに当てはまったから失敗するという意味ではありません。ただ、私はこういう場合ほど、製造を急がず、一度商品企画に戻った方がいいと考えます。
OEM会社を選ぶ段階の方は、健康食品OEM会社・製造工場の選び方も参考になると思います。
商品は、発売してから育てていくものです
24年以上この仕事をしてきましたが、どれだけ時間をかけて市場調査をし、クライアントも私たちも『これはきっと大ヒットする』と自信満々で発売した商品が、思ったほど売れなかったことはあります。
逆に、私は内心『本当にこの企画で売れるのかな』と少し心配していたのに、発売してみると予想以上に売れ、大ヒットした商品もありました。
こういう経験を何度もすると、商品企画の段階で未来を完璧に当てることはできないと分かります。市場調査や競合分析はもちろん大切です。しかし、それは『絶対に売れる答え』を見つけるためというより、失敗する確率をできるだけ下げ、発売後に検証できる仮説を持つためのものだと私は考えています。
だから、十分に考え、人事を尽くして企画したのであれば、あるところで実際に市場へ出してみることも大切です。そこで初めて、企画書や会議では分からなかった本当のお客様の反応が見えてきます。なぜ買ってくれたのか、なぜ買わなかったのか。味はどうだったのか、価格はどう感じられたのか、説明しやすかったのか、パッケージは手に取りやすかったのか。
そうした実際のお客様の声を聞きながら、必要であれば『リニューアル』という形で改善を重ねていけばいいのです。最初から100点の商品を作ろうとするより、発売後も改善を続けながら、より売れる商品、そして販売する側にとってもより売りやすい商品へ育てていく。その考え方の方が、私は現実的だと思っています。
商品企画は、発売したら終わりではありません。発売してからが、本当の市場調査の始まりでもあります。
新規参入の方ほど、商品を作る前の時間を大切にしてください
初めて健康食品を作る方ほど、『早く商品を完成させたい』という気持ちになります。
しかし、製造が始まってから変更すると、原料、資材、表示、スケジュールなど多くの部分に影響します。商品になる前なら無料で考え直せることでも、製造に入れば費用が発生します。
だからこそ、私は商品になる前の段階でたくさん考えた方がいいと思っています。
健康食品OEM株式会社では、商品構想の段階からご相談いただけます。健康食品の知識がなくても問題ありません。むしろ、最初から完成された企画を持ってくる必要はありません。
新規参入の流れについては、健康食品OEMを初めて検討される方へ|新規参入ガイドをご覧ください。
まとめ|売れる原料を探す前に、売れる理由を考える
健康食品の商品企画で大切なのは、流行している原料を配合することでも、ヒット商品の二番煎じをすることでもありません。
誰に、どこで、いくらで、なぜ買ってもらうのか。
そのうえで、最初の1,000個をどう売るのか。そして、買っていただいた方がなぜもう一度買うのか。
ここまで考えて初めて、原料や処方の話が活きてきます。
市場調査というと難しい分析手法を思い浮かべるかもしれませんが、私はまず『自分たちは誰に、どうやって売るのか』を具体的にすることから始めればよいと考えています。
商品企画の段階で迷っている方は、完成した企画書を用意してから相談する必要はありません。『こういうお客様に商品を作りたい』というところからでも十分です。







